教科書系出版社の就活に役立つ、採用率を確実に高めるたった一つのアイテム
出版社への就職は狭き門
出版不況と言われて久しいですが、出版社への就職はいまだに人気があります。
しかし、新卒で出版社に就職するというのは非常にハードルが高いです。
理由としては大きく3つ。
- 超有名出版社は倍率が高すぎる
- 採用人数が1桁台なのがザラ
- そもそも新卒採用をしていない
超有名出版社は倍率が高すぎる
出版最大手と言われる小学館、講談社、集英社、KADOKAWAなどは毎年20〜40名程度の採用を行っていますが、出版社の中では超有名企業のため、そのぶん応募する学生が多く、倍率が非常に高いです。
採用人数が1桁台なのがザラ
出版業に就職を希望するうえで意識しておいてほしいのは、あなたが名前を聞いたことある出版社は、(少なくとも従業員数という面で)中小企業であることが多いということ。
新潮社、文藝春秋など誰でも知っている雑誌や文芸書で有名な2社も従業員数は400人弱。双葉社や竹書房、芳文社といった漫画に強い出版社や、児童書や絵本の出版社として世間に名の知られている福音館書店やフレーベル館、ポプラ社などの中堅出版社も、従業員の数は100〜150人程度。別業種の中堅企業と比べると少なく、それだけ新卒の採用人数も多くはありません。
そもそも新卒採用をしていない
3,000社以上あると言われる日本の出版社ですが、社員数が30人以下の会社が9割を占めています。従業員が50名もいると、上位200社に入る部類なのです。それくらいの規模の出版社になると、そもそも新卒での採用を全く行っていない会社がほとんどです。結果、名前の知れている上位の数十社に就職希望者が殺到するため、それだけ出版社への就職は狭き門となっているわけです。
教科書出版社は中小企業
教科書、主に小中高向けの教科書を主に発行している出版社は、全国におよそ50社ほど。
業界最大手と言える東京書籍こそ500人の従業員を抱えていますが、誰もが知っている教科書を作っている会社でも、100〜200人前後、それ以下の従業員しかいないところも少なくありません。
有名だけど少人数
代表的なところでは、「チャート式」で有名な数研出版は303名。国語の教科書で強い実績を持つ光村図書は213名。地図帳でトップシェアを誇る帝国書院は80名、歴史系教科書の雄、山川出版はなんと従業員数42名と、著名さに比例して従業員の数は非常に少なく、それだけ毎年の新卒採用人数も多くはありません。
出版社名 | 従業員数 | 採用予定人数 |
東京書籍 | 500名 | 11~15名 |
数研出版 | 303名 | 6~10名 |
第一学習社 | 255名 | 1~5名 |
啓林館 | 218名 | 11~15名 (実績は10名程度) |
光村図書 | 213名 | 若干名 (実績は5名程度) |
三省堂 | 147名 | 予定なし |
開隆堂 | 101名 | 予定なし |
帝国書院 | 80名 | 若干名 (実績は2名程度) |
山川出版 | 42名 | 予定なし |
だからこそ、きちんと業界研究をしたうえで履歴書やES、面接の対策をするべきなのです。
内定に効く雑誌がある
教科書出版社の内定をとる確率を上げるため、他の就活生と差をつけるためにぜひ読んでほしい雑誌があります。
それは『内外教育』という雑誌です。
学校教育に関する専門誌ですので、教育学部の学生でもなければ見たことはもちろん聞いたこともない雑誌だと思います。大半の記事は教育問題や実際の教育現場に関することなので、なんとなく手にとってみるだけではいくら教科書とはいえ出版社への就活とはあまり関係ないと思われるかも知れません。
ですが、この雑誌の“ある特集”を読めば、教科書系出版社の業界研究で確実に1歩先を行くことができ、就活で有利な立場になることができます。
データを集めて“武器”にする
『内外教育』で見るべきなのは毎年の“採択率”のデータです。
全国各地区の教育委員会が文科省に提出したデータをまとめ、それぞれの出版社が各教科においてどれだけのシェアを持っているか、ということがひと目でわかります。
各教育委員会でもWeb上でデータを公表していますが、全国の情報を個人でまとめるのは大変ですし、地区によっては採択冊数や教科書個別のタイトルを公表せず出版社の名前しか載せていないことも多いです。明確に冊数とシェア率のわかる内外教育の採択率データは業界研究にとても有用なものと言えます。
このデータがあれば、
- 志望企業の有利な教科/不利な教科
- ライバル企業はどこか
などの情報を得ることができます。
特に不利な教科を知ることは重要です。例えば、数研は数学、光村は国語、山川は歴史といった得意分野については志望する就活生なら基本的に誰でも知っていることです。
不利な教科を把握しておけば、例えば履歴書の志望動機で「この分野を強くしていきたい」などと書くことができ、例えば面接で「会社の弱み」について聞かれたとき、論理的に説明する一助になり、企業研究の深さを面接官に理解してもらい、印象付けることができます。
結果、あなたを教科書出版社への内定に近づけてくれるのです。
複数年のデータを調べる
可能であれば、直近のデータだけではなく、最低でも4年以上の複数年度に渡って採択率を調べるようにしましょう。
複数年調べるメリットは、
- 年ごとの採択状況の増減を見る
- 新しい教科に進出しているかわかる
- 小学校の採択が4年ごと
大まかには以上の4つです。
年ごとの採択状況を調べることで、志望企業がどれだけ成長しているかがわかります。年々採択率が伸びていれば「その分野をさらに伸ばしていきたい」ということができ、落ち込んでいれば「採択率の向上に貢献したい」などと志望動機に書いたり、面接で発言したりできます。
少子高齢化などの原因により、30年前と比較して教科書の発行部数が40%以上落ち込んでいるいま、今まで進出していなかった教科に参入し、売上増をねらう出版社が増えています。その取り組みが年を追うごとにどう変化しているのか、シェアを広げているのかどうかなどを調べ、それに対する自分の意見を採用担当者に伝えることができれば、あなたの評価はぐっと上がるに違いありません。
小学校の教科書の改訂サイクルは4年間です。小学校教科書を中心に発行している出版社は多く、また今まで小学校教科書に参入していなかった企業が参入してくることも少なくありませんので、データを集めるためにも少なくとも小学校のサイクルで2回分、4年程度は調べておいた方が良いでしょう。
業界動向を知り、理論武装できる
また内外教育の採択率特集では、ただデータを載せるだけでなく、内外教育編集部が採択の雑感などを記事として掲載しています。何十年も教科書採択のデータを蓄積し発表しているので、内容には信憑性があり、重みがあります。それを読むだけでもESや履歴書の内容の充実させたり、面接対策に使うことができるでしょう。
教科書出版社の経営陣や管理職クラスの人たちは、業界の動向を知るために『内外教育』を、特に採択率のデータは必ず読んでいます。例えば面接の最後に「何か質問はありますか」と問われたときに「内外教育に出ていたデータに〇〇とありましたが〜」などと質問することで、しっかりと業界研究をしてきたんだな、という印象を与えることができるでしょう(もちろん、その後もし内容など突っ込んだ返答にちゃんと受け答えができなかったり、間違ったデータの話などをしてしまったら、逆に評価は下がリます)。
『内外教育』は買うと高いがタダで読める
『内外教育』は専門性が高いこともあり、基本的に学校や教育関係者が定期購読する雑誌なので、一般の書店に置いてあることはないでしょう。あったとしても最新号だけで、バックナンバーを数年分、複数冊入手することは難しいでしょう。
しかも1冊2,000円(税込2,200円)となかなか高価です。何冊も買うのはちょっと大変ですね。
でも安心してください。無料で読む方法があります。
大学図書館の蔵書を調べる
教育学部がある大抵の大学には『内外教育』が蔵書されています。
CiNiiの検索結果では、少なくとも273の大学図書館に蔵書されていることがわかります。
まずは、自分の大学の図書館に蔵書がないか検索してみましょう。
自治体の図書館の蔵書を調べる
東京都立図書館、千葉県立図書館などの各都道府県立の図書館にも、内外教育はほとんど蔵書されています。市町村立の図書館では蔵書されている館は少ないです。
自分の住んでいる自治体や通っている大学のある都道府県の図書館に、内外教育の蔵書があるか調べ活用しましょう。
国立国会図書館で調べる
東京近郊や京都近郊に住んでいる方は、国立国会図書館を利用することもできます。
日本国内で発行された本や雑誌のほぼ全てを納めている国会図書館にももちろん内外教育は蔵書されています。
教科書図書館で調べる
東京周辺に住んでいる方は、教科書図書館という教科書専門の図書館を利用することもできます。
教科書そのものはもちろん、教育などに関する雑誌や書籍も蔵書しているので、ここで内外教育を見つけることもできます。
また、教科書図書館ではその名の通り、戦後の検定教科書から最新の現行教科書までを収蔵しているので、各出版社の教科書を比較することはもちろん、死亡する企業の教科書がどのように変わっていったかなども調べることができ、企業研究に最適です。
東京近郊に住んでいて、教科書出版社を志望している方は、一度足を運んでおいて損はないでしょう。
公共図書館は基本無料
公共図書館は、図書館法で「料金を徴収してはならない」と定められているため、入館や資料の閲覧は無料で行うことができます。上記で挙げた図書館については、全て無料で入館することができます。(教科書図書館は公共図書館ではありませんが無料で入館できます)
ただし、資料の複写(コピー)は有料です。自宅に持ち帰ってじっくりと調べたい時などは複写サービスを利用して資料を持ち帰りましょう。
特に、国立国会図書館や教科書図書館は図書の貸し出しを行っていません(館内閲覧のみ)。必要な分だけ複写サービスを利用しましょう。
大学図書館や都道府県立図書館は、基本的に図書の貸し出しができますが、雑誌は貸し出し不可だったり、一度に借りることができる冊数に制限があり、また借りられても1週間程度で返却する必要があります。就活で長期間手元に置いておきたい場合は、やはり複写サービスを使って必要な箇所を手に入れておいたほうがよいでしょう。
まとめ
就職先に教科書出版社を志望しているのであれば、『内外教育』に掲載されている教科書採択率のデータを複数年調べるのがおすすめです。
このデータを使って業界研究を進め、他の就活生よりも有利な立場で就職活動を進めていきましょう!